武術の稽古で「寝技」があるのは地竜拳と酔拳ぐらい。

師匠のレノンリー老師は常々こんなことを口にします。

酔八仙之術(酔拳)ではグランドワークの基礎として臥禪といういわゆる寝転がった状態での稽古をたくさんやります。

その中でもインパクトの強い「涅槃」稽古。

禪の状態100%であれば、立ってようが座ってようが、寝転んでいようが関係ありません。

涅槃とは

涅槃とは仏教用語で、「一切の煩悩(ぼんのう)から解脱(げだつ)した、不生不滅の高い境地。」という風に言われています。

これを「知って」いても何も起こりませんし、使えません。

逆にしっかりと使えて「できる」ようにするのが武学体術の基礎です。

ですので、涅槃の状態がどういった状態なのかを、自分の身体で体現できることが重要になります。

涅槃の状態とはいわば、禪が100%綺麗にできている状態とも言えます。

一切の煩悩がなく、解脱した状態。

思考の介入がなく、感覚優位。

わたしが全てであり、全てがわたしである状態。

それを体現することで、相手との間に即時にムスビが起こります。

【涅槃の稽古】寝転がった状態で相手にゼロを通す

座禅にしろ、涅槃にしろ、自分ではできてるつもりになっても「本当にできているかどうか」を一人では検証することはできません。

ですから、武学体術では必ず相手との間のエネルギーによって体現して、できてるかどうかを検証していきます。

これをPQSと言いますが、目の前で現象化させられることが武術家としての最低限のスキルですから、できるかどうかが非常に重要です。

できてなかったら、またひたすら稽古をするだけです。

さて涅槃の稽古ですが、これは寝転んだ状態で、相手に触れてきてもらい相手にゼロを通すという稽古です。

寝た状態で床の反発やそういったものを感じながら自身をニュートラルに近づけます。そうすると相手と調和するあり方が見つかり、その結果相手との間に調和が保たれ、相手のエネルギーが相手にそのまま戻っていく「ニュートラル」の状態を体現することができます。

言葉で説明するよりも実際に稽古して体感するのが一番の近道かもしれません。