胆力とは武術を体得する上で、最も重要かつ大前提となる力のこと。
少々の痛みは自分の内側でゼロ化し無力化することができなければ、相手の攻撃によって瞬時に世界をコントロールされてしまいかねません。
胆力とは相手からの攻撃によるエネルギーをゼロに戻し、何もなかったかのようにゼロの世界を体現し続ける力。
今回はこの胆力とその身につけ方について見ていきます。
胆力の正体
胆力とは、いわゆる精神力と関連が深く、特に痛みや恐怖に対しての耐性、あるいは忍耐力のことを言います。
相手から殴られたり、痛みを伴うエネルギーが入ってきた時に、そのエネルギーをゼロに戻し、何事もなかったかのように振る舞い続けられる精神力。
痩せ我慢とは違い、本当に痛みをコントロールし、無力化することが出来る力。
この胆力があると、どんな相手でもゼロに戻すことが出来る自信があるのでビビらなくなります。つまり精神面での強さも体得していくことにつながります。
胆力は何度も痛みを伴う経験とそれをゼロに戻す経験を積み重ねることで徐々に身についていく経験値です。
さて、胆力と似たような言葉に、胆識という言葉がありますが、これは胆力を身につけたものが行える行動のことであり、ベースにはやはり胆力が必要です。
どんな局面でもニュートラルを保ち続けられる精神力の根源が胆力であり、志を持って今までにないことを成し遂げ生きていく武学者にとって最低限必要なスキルと言えそうです。
胆力の身につけ方
胆力を身に付ける方法はシンプルで、何度も何度も痛みを経験し、その痛みをゼロに戻す経験を積み重ねることです。
武術ではまず、前腕と脛の強化から始めます。
それは排打功という方法で行います。
前腕部分や脛をぶつけて強化していく中で、生まれてくる痛みや恐怖心。
最初はアザができて、消えるのに2週間とかかかったりします。
しかしいつの間にかアザができても3日ぐらいで消える様になり、そのうちアザすらできなくなる。
自分の恐怖心の具現化がアザであり、そのアザが発現しなくなれば、恐怖心を克服する胆力が養われたということです。
しかし、更なる痛みや恐怖がきた場合には更なる胆力がなければ乗り越えられません。
ですので、胆力の稽古は一生物。常に続けていく必要のある稽古だと言えそうです。