古典的な太極拳の稽古法の中に推手があります。
手で推すと書くように、相手を推すわけですが力で押すわけではなくて、フォースで推します。
非常に深くて、楽しい稽古法なのですが、この推手には実は弱点があります。
それが酔拳です。
推手という競技がある
昔、格闘推手という競技があって、高い台の上で一対一の戦いを行っていたとか。
そこで相手を台の上から落としたら勝ちという、究極のルールの中、勝ち上がるのは推手を使う太極拳の名人ばかりでした。
そもそも、推手は形意拳の専売特許でしたが、いつの間にか太極拳の専売特許になりました。
そんな推手にも弱点があります。それが酔拳です。
なぜ推手の弱点が酔拳なのか
推手では相手のエネルギーをコントロールして相手を推すため、ある程度の身体的な距離が必要です。
ところが、酔拳は相手と組みついたり、寝技に持ち込んだり、ルールはありません。
そんな酔拳使いが推手の達人と対峙すると、相手の身体に密着し推手を使わせないことができます。
そもそも、中国武術で寝技があるのは、地龍拳と酔拳だけです。
中国では膝が地面につくというのは屈辱であるという文化的な概念があるため、膝や身体を地面につけることは避けられています。
それでも酔拳と地龍拳だけは寝技があるので、推手使いにとっては最大の弱点となります。
それでも、推手という稽古法は身体的なエネルギーのコントロールの習得にもつながりますし、何より世界的に圧倒的な人口を誇る太極拳愛好者とのコミュニケーションツールとして重要な位置付けにあります。