達人たちが使う技の1つに「先の先」という技法があります。
相手が斬りかかってくる前に、こちらが太刀を抜き斬る。
相手より先に斬るだけなら誰でもできるだろう?
と思うかもしれませんが、この技術は相手の意識をしっかりとキャッチできないとできない高度な技法です。
後の先と先の先
まず後の先と先の先という技法をしっかりと認識しておく必要があります。
後の先とは、要は後出しジャンケンのようなイメージで、冒頭のシチュエーションであれば、相手が斬りかかってくる時に、そのエネルギーを察知して後出しのように斬るというイメージです。
相手が斬りかかってくる軌道をあらかじめ把握することで、その太刀筋を避けて斬りかかることが可能になります。
そして、先の先は、この後の先をさらに進化させ、相手が斬りかかろうとする意識のニューロンの発火を事前に察知し、その発火の瞬間に相手より先に動くという技法です。
つまり、相手を無視しているわけではなく、相手をよりよく知ろうとするからできる技法です。
彼を知り己を知れば百戦危うからず
後の先も先の先も、どちらも対面法という技法で、戦略が組めない時に使います。
実際に対峙した状況において、最善策を導き出すやり方です。
目の前の相手から情報を入手して、その情報を元に自他不敗を体現する。
まず自分が負けないように、相手に斬りかかられる瞬間の情報を認知して相手より先に動く。
この先の先の技術が習得できるレベルまで稽古が積めるともはや達人の域に達しているのかも知れません。
合戦の中では対面法は使えない
さて、リアルな合戦の場では、対面法である先の先はあまり使えません。
あくまで一対一での技法なので、大人数が参加する戦においては、全体法という方法を使います。
視野を広げて、全体を観ることで、後ろから斬りかかってくる敵の殺意を察知して避けていく。
そういった武術的な用法を全て使えるようになるところまで稽古していくと、真の達人。
酔八仙之術でいう仙人に近づけるのかもしれません。